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ペンネーム:診断士二十数年生


◆職歴◆

1987年 国内生命保険相互会社入社
1993年 調査会社(ここで中小企業診断士取得)に転職
2004年 学校法人(学生部門教員と社会人部門研修講師)に転職
2016年 介護離組織で自営業研修講師スタート


◆取得の動機と受験◆

 中小企業診断士という資格を知ったのは、新卒で入った生命保険会社からの転職を考え始めた時期でした。もともと経営学部出身ということもあり、本屋で教材を立ち読みしていると内容やキーワードが懐かしく「転職の選択肢が増えるかな」と思い、その書籍を購入しました。しかし、バタバタと転職が決まり、新しく入った調査会社の仕事に忙殺されているうちに資格のことはいつのまにか忘れていました。
 中小企業診断士を本気で目指すきっかけになったのは、社内での異動でした。特定企画の調査から、会員中小企業からの問い合わせに調査レポートで回答する部署に移ったのですが、自分の知識不足を痛感することばかりでした。そのため、これは企業経営の勉強をしないとまずいぞ、という追い込まれた気持ちになったのです。その時にありがたかったのは同僚で勉強する仲間がいたことでした。飲みに行った時に「診断士やる?」「やろうか」で始めることにしました。二人で周囲のメンバーにも公言したので、引っ込みがつかず、挑戦を続けることができました。学習方法は、会社での通信教育補助制度もあり、日本マンパワーの通信教育を申し込みました。他には、過去問と追加で購入した問題集を解くというシンプルなものでした。仕事柄、財務やマーケティングの学習内容は業務に直結する知識も多く、一次試験はその年にクリアできました。しかし、二次試験の施策の暗記は不毛に思え、同僚と「今年はいいか~」という空気になり、とりあえずヤマをかけて受験はしたもののあっさり撃沈、二人して不合格となりました。ただ、二次試験の具体的なケース問題は手ごたえがあり、面倒だけれども施策の暗記をきっちりやれば来年はいけるな、と同僚と残念会&決起会を開いたことが記憶に残っています。翌年の二次試験リベンジ戦では無事二人とも合格、会社から合格祝い金も3万円をいただき、うれしかったのを覚えています。二次試験対策と言うと、当時から専門学校に通っている方もいましたが、業務である中小企業からの問い合わせへの対応が試験対策にもなり、ケース問題は大きな苦労を感じずにすみました。問題集の模範解答を「仕事のレポートに使えるよね」などと勉強仲間の同僚と情報共有しながら学習を継続することができていました。


◆実務実習の思い出◆

 1次、2次のペーパー試験に加え、診断士では3次の実務実習もあります。普通の会社であれば2週間も休みを取るのが大変な実務実習ですが、仕事柄職場の上司が快く送り出してくれました。本当にありがたいことでした。実習先は担当の先生の顧問先である小さなスーパーと釜飯屋の2社でした。実際の仕事で対応する会社に近い業態や規模でもあり、モチベーション高く臨めました。しかし、いろいろとインタビューしたり、競合調査したりと苦労して提案した内容は「理屈は分かるけど、実際にはねえ~」ということも多くありました。普段作成しているレポートでは机上の空論も多かったのでは?、を実感する機会でもありました。こうした経験も含め、実習自体は有意義なものでした。実習先企業の皆さんも調査やインタビューには親切かつ強力的で本当に良い経験だったと思います。一緒に実習した5人のメンバーと一緒に対象店の釜飯屋で打ち上げしたのも懐かしい思い出です。20年以上前のことですが、その中の一人とはいまだに年賀状のやりとりが続いています。


◆資格を仕事に活かす◆

 実際に診断士の資格をとって、仕事にどう活かすかが大事なところです。幸い、私は職場でのレポートを書くにあたって、学習した内容を随所に活かせたと感じています。また、それだけではなく名刺に印刷した「中小企業診断士」という名称が提携先の金融機関の方や会員企業の経営者の方から信頼を得る材料になったことも大きな成果でした。「診断士二十数年生さんは中小企業診断士の勉強したんだね。じゃあこの方法でやってみるか」と、アドバイスを受け入れてくれたケースもありました。また、社会人になってからも体系的に学習を続けていることが立派だよ、なんてほめていただいたこともあります。ただ、資格は取れば終わりではなく、名刺に負けないように継続的に学習することも結果として仕事に活き続けていると感じています。


◆資格と転職◆

 資格を取ると転職の選択肢が広がるのでは、と最初に思ったのは生命保険会社時代でした。実際、2度目の転職ではその効果は多少あったと思います。最初に転職した調査会社は40歳までには起業を目指そうという空気のある会社でした。39歳になったものの独立という選択肢はリスクが高く、躊躇していました。子供が小さかったこともあるかもしれません。そのまま会社に残るという選択肢もあるにはあったのですが、仕事にも慣れ、ややマンネリ化してしまっていることもあり、転職で新天地を探してみようという気持ちになっていました。
 いくつか候補先を探す過程で学校法人の教員募集が目に留まりました。実務的な学習を行うということは知っていましたし、調べてみるとFPがらみの授業科目があることも応募の気持ちを後押ししてくれました。畑違いの職場ではありますが、情報を提供する相手が中小企業の経営者から学生さんに変わるだけ、と考えチャレンジしてみました。結果は無事合格で2度目の転職を実現することができました。後で知ったことですが、教員採用は大学院卒の方が多く、できれば修士が望ましいということでした。ただ、大学で働きながら大学院に行くこともできるし、社会人になってから中小企業診断士やFP技能士1級を取得しているのは学習する意欲と能力を持っていると受け止めていただき、採用につながったようです。常に同じ評価がされるということはないでしょうが、資格取得は学習意欲やチャレンジ精神を認めてもらえる材料になりそうです。
 ちなみに、私は3年目に学生教育部門の教員から社会人教育の部門に学内異動しました。社会人部門では企業研修が主な仕事ですが、そこでは中小企業診断士は一定以上の評価を受けることができます。大学では内部の職員講師だけでなく、外部講師も活用しながら研修事業を推進しています。その外部講師を新たに採用する場合、中小企業診断士が採用対象の一つのポイントとして考えられています。


◆資格と勉強会◆

 資格を取った方にお勧めしたいのは資格保有者の勉強会への参加です。テーマの勉強だけでなく、仲間づくりになりますし、資格維持に関する最新情報に触れる機会にもなります。私は最初調査会社の仕事に関わるフランチャイズビジネスの研究会に参加しました。フランチャイズ業界の経験者の生の声も聞ける貴重な会合でした。ただ、平日の会合もあり、仕事の関係で不参加も多く、結局2度目の転職を機に足が遠のきました。もう一つ参加したのが診断士の中のFPの勉強会です。ここは、20年以上在籍しています。サラリーマン生活を終えた私にとって属する組織は現在こちらだけです。資格取得の際には自分に合う勉強会を一つ二つ見つけることをお勧めします。


◆資格と独立◆

 現在、私は独立自営業者の研修講師として生活しています。これは、大学が嫌で辞めたわけではありません。田舎の母親の介護の事情があり、サラリーマンとしては勤務を継続し難い状況になったからです。しかし、自分が担当していた研修は比較的負担が少なく業務を遂行できますので、研修のある時だけその現場に向かうという形で仕事を継続しています。いわゆる介護離職ではなく、介護離組織で仕事を続けている状態です。ですから、資格を軸に独立中小企業診断士というわけではありません。ただ、仲間の外部講師の話を聴くと、「名刺は研修講師よりも中小企業診断士のほうが重みがある」とのことで名刺には2つ肩書を書いているという方が多いようです。


◆現在と今後◆

 現在は仕事量を抑え、親の介護の関係で高知と自宅の神奈川の二重生活(デュアルライフ)となっています。息子が就職して独り立ちしてくれたので、今後は故郷高知で暮らすか、全国放浪生活になるかもしれません。いわゆる中小企業診断士としての活動で食べていくということにはならないですが、働くうえでの知識・スキルの土台になっていることは間違いありません。


◆資格取得の意味◆

 よく資格は「足の裏についた米粒」と言われます。取らないと気になるけれど、取っても食えないというものです。中小企業診断士は、税理士や社会保険労務士のように法律で守られた固有業務があるわけではないので取っただけで独立して食べていくのは難しいと感じています。しかし、ビジネス社会を生き抜くうえで必要な知識が凝縮した内容を学習できる貴重な資格だと感じています。そのためか、社内に属したまま中小企業診断士になる方も多い状況です。30代で資格を取ったからすぐ独立はできないかもしれませんが、業務で身に着けた専門知識を中小企業診断士と絡めると道が開けるような気がします。FC相談診断士、ITコンサル診断士、財務コンサル診断士、人材開発診断士などそれぞれの分野で独立成功している方を存じ上げています。
 20年以上前の勉強中の私に声をかけるとしたら「頑張って取ろうよ!十分リターンはあるよ」と伝えます。  実際に、コスパで考えると、資格取得のための通信教育や書籍の費用は2つ目の会社の通信教育補助や祝い金でカバーできました。費やした勉強時間は仕事にも使える知識のためにほぼ全て償却済みです。さらに、意図する二度目の転職ができた要素に中小企業診断士取得があったならばコスパはかなり高いものになります。さらに勉強会で知り合った仲間やそこから得られる情報価値はもはやプライスレスです。中小企業診断士に限らず、自分の仕事に関わる資格で興味があればぜひチャレンジしてみてください。きっとプラスになるはずです。